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Herve Samb

Teranga

2017年8月13日

MCLD-009

¥2500+税

レーベル直販サイト
https://www.wontanara-tokyo.com/items/8599276

エルヴェ・サム 「テランガ」

「僕がここ数年、最も影響を受けているギタリスト”エルヴェ・サム”。2017年まで発展してきた様々な音楽要素を、彼のルーツ”セネガル”へ持ち帰り録音されたこの最新作を聴いて興奮を隠せない。ジャズファン、ギターファン、ワールドミュージックファンはもちろん、聴いた皆が笑顔になってしまうだろう。アフリカンリズムと美しいメロディ、ハーモニー、驚きと喜びがここに!」-小沼ようすけ

1. Thiossane (Herve Samb) チョサン 4:13
2. My Romance / Sama Leer (Richard Rodgers / Alioune Wade) 5:16 feat. Adiousa マイ・ロマンス / サマ・リア feat. アディウーザ 5:16
3. Saaraba (Medley saaraba – Ñaani bagn na – Dienewally, saaraba & Dienewally : traditional, Ñaani bagn na : Samba Kumba Kalaado Cise) feat. Souleymane Faye サーラバ feat. ソウレマネ・フェイ 5:19
4. Dem Dakar (Herve Samb) デム・ダカール 4:52
5. Tasé (Hervé Samb) feat. Faada Freddy & Nongo D タッセ feat. ファーダ・フレディ&ノンゴD 5:38
6. The Days of Wine and Roses (Henry Mancini) 酒と薔薇の日々 4:52
7. Niouk (Herve Samb) ニオウク 1:22
8. Giant Steps / Bëg Tekki (John Coltrane, Herve Samb) feat. Nongo D & Mike Ladd ジャイアント・ステップス / ベグ・テッキfeat. ノンゴD & マイク・ラッド 3:52
9. Bireum Yaasin Boubou (traditional) ビレウム・ヤアシン・ボウボウ 4:23
10. There Will Never Be Another You / Bara Mbaye (Harry Warren) ゼア・ウィル・ネバー・ビー・アナザー・ユー / バラ・ンバイェ 3:40
11. Denianke (traditional) feat. Ndiouga Dieng デニアンケfeat. ンディウガ・ディエン 3:51

Herve Samb (guitar, b.vocal, musical direction) エルヴェ・サム
Pathe Jassi (bass, upright bass, b.vocal) パテ・ジャシ
Alioune Seck (sabars percussions, tassou) アリュン・セック
Abdoulaye Lo (drums) アブドライエ・ロウ

Noumoucounda Cissoko (kora on 11) ノウモウコウンダ・シソッコ
Cheikh Diallo (rhodes, wurlitzer on 5, 9, 10) チエク・ディアロ
Samba Ndokh Mbaye (tama percussion on 6) サンバ・ンドゥク・ムバイエ
Daniel Moreno (percussion on 6) ダニエル・モレーノ
Charly Sy (vinyl scratch on 7) チャーリー・シー
Julien Birot (b.vocal on 10) ジュリエン・ビロ
Karen Jeauffreau (1st violin on 3) カレン・ジョフロ
Jacques Gandard (2nd violin on 3) ジャック・ガンダール
Raphael Aubry (alto violin on 3) ラファエル・オウブリ
Florence Hennequin (cello on 2 and 3) フロレンス・エネキン

Produced by Herve Samb and Julien Birot
Recorded in May 2016 at Studio La Factory (Dakar / Snegal) by Julien Birot

セネガル出身でフランスとの二重国籍を持つギタリスト、エルヴェ・サムの最新作にして国内デビュー盤「テランガ」が、ヨーロッパ発売に先駆けて日本先行発売される。“テランガ”とはセネガルの言葉で「もてなし」「温かく歓迎する」等の意味。

エルヴェ・サムはセネガル、ダカール生まれ。現在パリ在住。これまでに2枚のジャズアルバムとダニエル・モレーノとの共作盤を1枚リリースしている。ピエール・ヴァン・ドルマルにギターを師事。デヴィッド・マレイ、ミシェル・ンデゲオチェロ、小沼ようすけ等のレコーディングに参加。現在はリーダー活動の傍ら、リサ・シモン(ニーナ・シモン娘)や、NY在住シンガーSOMIのミュージカルディレクターも務めてもいる。マーカス・ミラーのパリ公演に招待されてゲスト共演するなど、近年話題の存在。

前作から4年ぶりとなる「テランガ」は、セネガルで録音されたアフリカ民族音楽とジャズのミクスチュア。ギター、エレクトリックベース、サバール、ドラムの基本編成に、シンガー、弦楽四重奏団、ラッパーなど曲毎に様々なゲストが入る。セネガルの若手ポップシンガーのアディウーザ(vo)が歌う「マイ・ロマンス」にも注目。

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エルヴェのように良き旅をした者は幸せなり

ヨーロッパそしてアメリカでの鮮烈な成功をおさめたギタリスト、エルヴェ・サムが故郷ダカールに舞い戻った。この時の為にとパリで特別に誂えたマヌーシュ・ギターを携えている。セネガルのミュージシャン達とアルバム『テランガ』を録音する為だ。故郷の地に戻ったからといって、自らのアイデンティティーに立ち戻ろうということではない。これは新たな広がりを求める出発なのだ。

サム自身が言うように、このアルバムは「扉」だ。現代のジャズ・シーンで活躍するという幼少期の夢をかなえ成熟期へと向かう今こそ開く扉、西洋から彼が音楽を始めた地アフリカへと向かうための扉、伝統と現代性との間を行き交うための扉、いつでも人を歓待する家の扉のように開かれた扉 ― セネガルの国の扉も同様に開かれているのであろう、このアルバムで現地ミュージシャン達は歓待の歌を歌っているのだ。アルバム・タイトル『テランガ』はウォロフ語で「ホスピタリティー」「招待」を意味している。

「一般的にクロス・オーバー的なプロジェクトというのは、ヨーロッパやアメリカのジャズ・ミュージシャンが先頭に立ってアフリカ、インドなど異文化の影響を取り入れようとすることが多くて… その逆というのはとても珍しい」と彼は言う。『テランガ』はその点で良く成功している。ジャズがセネガルのダンスに入り込み、アフリカのメロディーを歌い、インスパイアされている。サムが「サバール・ジャズ」と呼ぶムーブメントだ。サバールとは、このアルバムでもよく使われているセネガルの伝統的な太鼓。その音色やリズムはセネガル人の声色やアクセントを反映しているかのようで、現地の音楽に深く結びついた楽器である。

ジャズのレパートリーと伝統音楽との出会いが幸福なものになるようにと、サムは高名なサバール奏者一家出身のアリウヌ・セックに参加を求めた。サムがジャズのテーマを提示すると、セックはそれに伝統的なリズムで答える。彼等が長い時間かけた成果がこのアルバムであり、その三分の一は超有名なジャズのスタンダードが占めているのだが、あたかもそのスタンダード・ナンバーが外国語を習得したかのように聞こえてくる。彼によれば「これらのナンバーを選んだのはポジティブで明るい調子で喜び溢れる曲だから。そこにセネガル的な韻律やアプローチを取り入れてみた」とのこと。かくして演奏された「ゼア・ウィル・ネバー・ビー・アナザー・ユー」「酒と薔薇の日々」「ジャイアント・ステップス」ではメロディーやコード進行は変えられていないのだが ― それゆえどの曲なのか理解できるのだが ― リズムやフレージングが明らかにアフリカの色を帯びている。このジャズは、サムが慣れ親しんだ英語のジャズではもはやなく、ウォロフ語のアクセントに染まり、違う語り方をしはじめる。スウィングが2拍目と4拍目にくる一方で、サバールは1拍目と3拍目にアクセントを打つ。「もし私のソロの音を消してリズムだけが聞こえるようにしたら、サバールのソロ演奏を聞いているかのようになる」とサム。

「サバール・ジャズ」を通してサムが目指しているのは、セネガル音楽のホスピタリティーをジャズに投影すること。そうすることが自然なことであるかのように。とはいえ『テランガ』はそこで終わらない。セネガルの若いミュージシャン達が自国の伝統的な音楽の豊かさに目を向けるように、とサムは狙っているのだ。ヨーロッパで成功を収め、アメリカに何度も移住しかけた彼は、今日自国の伝統的な音楽を再発見しその素晴らしさに驚いている。ダカールに住んでいた若い頃は西洋の音楽だけを夢に見て、伝統音楽のことはむしろ小馬鹿にしていたのに。「今私がジャズを知っているのと同じくらい伝統音楽を知りたいと思った」と言う彼。様々な経験を経て耳も研ぎすまされた彼が今夢中になっているのは、子供の頃まわりに溢れていてどこでも聞こえていたにも関わらずまともに耳を傾けたことがなかった音楽、なのだ。

そのセネガル伝統音楽の美と力を多くの人達に感じてもらいたいとの思いから、『テランガ』にはスタンダードや新曲以外にも伝統音楽の曲が幾つか収められている。とはいえ、サバールや伝統に焦点を当てることで現代のセネガルの音楽がもつバイタリティーが表に出てこないようでは困る。豊かな過去を持つセネガルでは現代に甦らせる価値があるものがたくさんある。過去の音楽も現代へと結びつけられていく。それを世界中の人々に知ってもらいたいというサムの思いは強く、このアルバム制作の為に多くの歌手に参加してもらうことになった。ウォロフ語で歌うという共通点はあるが、彼等の出自はバラエティーに富んでいる。グリオもいればアーバン・ミュージックの若手も、ポップ・ミュージックの歌手もいる。セネガルのミュージシャンは多様だということだ。彼等が一緒に祝宴をあげるために欠けていたのは、旅をして成長したセネガル出身ミュージシャンのギターが絆を紡ぐことだけだったのだ。

ロマン・ヴィレ (訳 佐佐木實)

 

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